後から振り返って意味付けすると「そうだったな」という縁をここに置いておこうと思う。
史上最恐の上司に反発するココロ
最恐である。
そしてそれは個人的見解ではなく、スタッフの共通認識であった。様々な職場で色々な上司と部下の関係になったが、上司というものは、嫌われていることのほうが多い印象である。この上司は、立場上、部下に迎合できない信念のようなものを持ち、貫いているといった印象だった。
この人の前の上司は、上司のさらに上の上司を悪く言うことで自身を正当化させているように見えた。その点、この人は違った。残業代を支払わせない圧力のように、法的にも問題な部分に対しては、「問題があるけど自分だけでどうにかできることではない」と、人間としての評価とは切り離していた。なので、人物を悪く言っているのは聞いたことがない。行動は改善しろとしつこく言われている人がいたが。
猪突猛進エネルギーコワすぎ!
ところで、なにが最恐かって?自身の理想に突き進むパワーが、だ。周囲のスタッフが「それ、無理ありすぎます~」と悲鳴を上げてもイノシシのように突き進むのだから、周囲はそりゃあ疲弊する。
スタッフ全員が暗黙の了解で、毎日の業務内容を85~90%の力で運用していたと例えよう。少しの余力は、緊急事態に対応するためだ。
上司は、そこをつついた。100%は当たり前のこと、110%でいけ、と。お風呂介助の日など何もなくても、90%を軽く超えてくるなんて日常茶飯事だった。
キツイ。なので内心では反発し続けた。
「安全第一・余力を持って」に違和感
フロアが移動になり、上司も変わる。その頃から徐々に違和感が見え始める。「安全第一・余力を持って」が合言葉になっていることに。
安全配慮は、当然である。いついかなる時も利用者さんの安全は守られなければいけない。残業代も出ないのだから、業務内で書類作成関係をするのは当然のことだと言ってくれる。移動先の上司はとてもスタッフ思いだった。そこには感謝している。
ワーカー室で書類作成の時間を取る事と、110%の力で業務に当たれという言葉は矛盾しているようで一貫している。方向性こそ違えど、どちらも重要な業務なのだ。
で、件の最恐上司の何がよかったかって事だが、「目」をくれた気がする。
利用者さんひとりひとり、出来る事・出来ない事、どうありたいかという希望、入所前の生活や背景が全部違う。当然のことだ。
しかし、わずか3時間で20人以上を入浴させ、その同じ時間で入浴しない利用者さんのトイレの介助、昼食の準備など同時並行で複数の業務を分担して回している。どこかが詰まればすべてに影響が出る。そのような毎日が戦争ともいうべき状態で、それを承知の上で、「個別支援」を言い続けた人が最恐上司なのだ。
見る目を育てた上司
反発しながらも、それを実践しようと試行錯誤している筆者がいた。そしてそれはある日突然やってきた。
「ん?(介助される順番を)待てない?ひとりで食べてみる?」と話しかけていた。
両腕の関節の動きが悪く、食事の自力摂取はできず、全部介助で行っていた利用者さんの可能性を試そうとした瞬間である。その時はおやつの介助中で、おやつはたまごボーロだった。1つぶ手に載せてみる。嬉しそうに頑張って口に運ぶ。食べることができた。それからその方の、自力摂取に向けたリハビリ計画が練られ実行された。残念ながら移動直前の発見であり、フロアで見届けることはかなわなかったが、様子は他のスタッフから聞いていた。
筆者が、こんな風に感じていることを最恐上司は知らないであろう。
ふたご座B型の八方美人上司
とにかく愛想がいい。誰にでもにこやかで、嫌な顔をしているのを見たことがない。ある意味、尊敬する。筆者には無理だ。
そんな上司だったが、どんどん弱っていった。これまで、本来なら居るはずのセンター長という役職の上司が居なかった。そのセンター長が、新しく着任したことが原因だった。上司ができたことが問題の本質ではない。八方美人上司が、愛想を振りまけないくらいに合わないのだ。
はじめは、ささいなひび割れのようだった信頼関係の危うさも、日々拡大しながら亀裂を大きくしていた。そして、八方美人上司が壊れた。退職し、自宅療養を余儀なくされていた。
人を大事にする姿勢
そんな八方美人上司の何がよかったかって?人を大事にする姿勢である。
訪問介護サービスの事業所はどこも登録ヘルパー(パート)さんが、現場業務の大半を担っている。登録ヘルパーさんは、介護保険の仕組みでは直行直帰が原則である。事務所にいる八方美人上司とは月1回のミーティングくらいしか顔を合わせない。双方の前後の予定によっては、事務所で顔をあわせても相談事や悩みを話す時間が取れないことのほうが多い。
八方美人上司は、時間外だからとかそういうことは一切考えずに、登録ヘルパーさんからの電話での相談ごとに応えていた。そういった姿勢が登録ヘルパーさんから絶大な信頼という形で表れていた。
八方美人上司が抜けた後、センター長の一言で業務時間外は携帯電話の電源をオフにすることになった。会社の携帯電話を持っていたのは、新しく八方美人上司の役職に就いた同僚だった。少しづつ、事故が起こるようになった。
後に、八方美人上司の、人を信じぬく強さを見習った。仕事の悩みを共有することでココロを軽くし、コミュニケーションを円滑にする姿勢に、筆者自身も助けられていたと知ったときはどれほど感謝したかしれない。
おわりに
どんな相手でも、自分を成長させてくれていると思う。今回、ここに登場した2人が特別なわけではない。強烈なだけである。
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